「残業時間」の数え方。・・・いわゆる「残業」ってどこからですか?

先日、「所定労働時間」と「法定労働時間」の違いを説明する機会をいただきました。説明させていただいて気がついたのですが、これ少々ややこしいですよね。
今回は、この件について記載していきます。
「労働時間」には「所定」「法定」があります。そして、「残業時間」(時間外労働)には「法定内」「法定外」があります。
・・・どういうことでしょうか。

まず「労働時間」についてですが、「所定労働時間」とは、会社(事業所)が定めている労働時間です。一方、「法定労働時間」とは、法律が定めている労働時間のことを指します。
「法定労働時間」は、原則として1日8時間、1週間40時間とされていて、その時間を超えて労働させてはいけない、としています(業種や、事業所が採用している労働時間制によって変わってきますので、こちらの数字はあくまで「原則」です)。
「所定労働時間」は「法定労働時間」の範囲内で事業所が定める労働時間ですので、事業所によっては、例えば、「所定労働時間は1日7時間、1週間35時間」ということもあります。

次に「残業時間」ですが、こちらは「法定内時間外労働」と「法定外時間外労働」があります。
「法定内時間外労働」とは、「法定労働時間は超えてはいないけど、所定労働時間は超えている」時間外労働を言い、「法定外時間外労働」とは、「法定労働時間を超えている」時間外労働を言います。

一般的に「残業」(時間外労働)をした場合、通常の労働時間単価の2割5分増し以上の割増賃金が支払われることになっています。この割増賃金の対象となる労働は、「法定外時間外労働」のみで、「法定内時間外労働」に対しては通常の賃金のみが発生し、割増賃金は発生しません。
具体的な事例を挙げますと、所定労働時間が7時間の9時から17時まで(休憩1時間含む)の事業所において19時まで働いた場合、合計9時間労働したことになります。この場合、法定労働時間は9時から18時までの8時間になりますので、17時から18時の1時間は「法定内時間外労働」で割増賃金の発生はありませんが、18時から19時までの1時間は法定労働時間の8時間を超えているため「法定外時間外労働」となり割増賃金が発生します。

いわゆる「残業時間」は、あくまで法定労働時間を超えた部分になりますので、例えば厚生労働省が労災の認定基準(「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」)で明示されている「1か月間におおむね100時間」や「1か月当たりおおむね80時間」とされる「時間外労働数」は、「1週間当たり40時間を超えて労働した時間数」とされていて、「法定時間外労働」の時間外労働としています。

長時間労働による労災認定の申請を考えている方や残業代請求を考えている方は、まずは所定労働時間の確認をしてください。もし所定労働時間が8時間未満の場合は、ご自身が認識されている「残業時間数」と実際の「残業時間数」が違っている可能性があります。

「残業時間数」の認識に多少のズレがあった場合でも、長時間労働」に変わりがなければ是正が必要ですし、長時間労働が原因で心身を壊し働けなくなってしまっていたら労災の申請をした方がよいと思われます。また、 残業時間数が何時間であっても支払われるべき賃金は支払わなければいけませんので、残業代が支払われていない場合は、残業代を請求することを考えてもよいと思います。

所定労働時間の確認と共に、ご自身の労働環境をいま一度ご確認ください。

当事務所には、残業代請求や未払い賃金その他の会社とのトラブルについて、精通している弁護士がおります。
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