「育休がとりにくいのです・・・。」 〜シリーズ 社保と残業と私 4〜

今回のシリーズの中で、今後の日本にとって、経済の発展のためにも年金の受給額のためにも女性の就労が必要不可欠になってきていると何度か記載していますが、女性も男性と同じように働けるのかと言うと、必ずしもそういうわけにはいきません。
6月25日の日経新聞によりますと、総務省が発表した平成26年1月1日時点の日本の総人口は1億2,643万4,964人で、前年より24万人少なく、5年連続の減少となったそうです。出生率はやや持ち直したのですが、死亡者数の増加が止まらず、自然減は7年連続とのことです。
人口は減ってきています。このままですと、女性の就労が増えたとしても労働力人口は減り続けます。人口の減少を食い止めるためには、出生率の向上が必須になります。
女性は、働き続けることと子どもを産むことの両方を期待されています。
しかし、<えっ?もらえる年金額って、こんなに少なくなるんですか?〜 シリーズ 社保と残業と私 1 〜>でもご紹介しましたが、厚生労働省の発表した「平成25年度 都道府県労働局雇用均等室での法施行状況の公表 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、パートタイム労働法に関する相談、紛争解決の援助、是正指導の状況を取りまとめ」によりますと、「婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱い」が前年と比較して14.8%増加した2,090件で、相談件数の増加数が最も多くなっています。つまり、社会が女性に就労と出産を必要としているにもかかわらず、職場環境が女性の就労と出産を阻んでいると読み取れます

この現状をどうしていけば良いでしょうか。
「婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱い」について、「法律面」と「意識面」の2方向から考えていきたいと思います。

まず「法律面」ですが、男女雇用機会均等法の第9条では、性労働者の婚姻・妊娠・出産退職制や、結婚を理由とする解雇、妊娠・出産その他それに伴う休業等を理由とする解雇その他の不利益取扱い禁止を定め、また、性労働者の妊娠中又は産後1年以内になされた解雇については、事業主が妊娠などを理由とする解雇でないことを証明しない限り無効であるとしています。
また、産前産後休業・育児休業の取得や、一定年齢の子を養育する労働者の働き方(就業制限等)については、労働基準法育児・介護休業法で権利等が詳しく定められており、いずれもその権利を行使することによる不利益な取扱いを禁止しています。
つまり、会社が婚姻、妊娠、出産等を理由に労働者に対し不利益な取扱いをした場合、会社のその行為は法律違反になる可能性が高いです。会社は出産や育児についてこれらの法律を改めて確認する必要はありますし、不利益な扱いを受けた労働者の方々については、労働基準監督署やその他専門家に相談することをお勧めします。次に「意識面」についてですが、婚姻、妊娠、出産等を理由に労働者に対して不利益な取扱いをすることを法律で禁止していたとしても、職場の雰囲気から、例えば育児休業が取りにくい等といった場合、せっかくの権利を行使することは難しくなります。
6月23日に厚生労働省が発表した平成25年度の育児休業取得率に関するデータによりますと、平成23年10月1日から平成24年9月30日までの1年間に在職中に出産した女性のうち、平成25年10月1日までに育児休業を開始した女性(育児休業の申出をしている女性を含む)の割合は、76.3%で、前回調査(平成24年度調査83.6%)より7.3ポイント低下しています。やはり、この数字から見ても、育児休業等を取得しにくい職場環境になっているのかもしれません。(なお、男性の割合は2.03%で、前回調査(同1.89%)より0.14ポイント上昇しています。)
男女共、気兼ねなく権利を行使出来るようにするためには、出産や育児に対する職場の意識を変えていく必要があります。

平成26年男女共同参画白書内閣府男女共同参画局作成)に、興味深いコラムが載っていました。最近は、「イクメン」ならぬ「イクボス」が注目を集めている、という内容です。
群馬県では、平成24年度から、男性の育児参加・育児休業取得を支援するため、「男性従業員」だけでなく「事業主・上司」にも意識改革を働きかける「ぐんまイクメン・イクボス養成塾」を開催しているそうです。「イクボス養成塾」では、企業の経営者や管理職を対象に従業員の育児参加に理解のある「イクボス」になってもらうためのセミナーを開催し、従業員の育児参加という側面だけでなく、「経営戦略としてのワーク・ライフ・バランス」等、経営層に戦略として捉えてもらえるよう工夫しているとのことです。
女性だけでなく男性も積極的に育児参加をするようになれば、育児休業や短時間制度を取ることに対し、色々な職場も自然と受け入れていくのではないかと思います。

今後の日本の発展に、女性の力は不可欠です。「結婚や出産をした女性は会社を辞めた方がいい」や「育児は全て女性すべきである」などといった考え方は時代に合わなくなってきています。
「(略)・・・時々服を買ってね 愛するあなたのため きれいでいさせて」(平松愛理 『部屋とYシャツと私』より)と、金銭的に夫に頼る関係ではなく、お互いが自身の服を買ったりお互いにプレゼントできるような、共に働き共に育児をし、あらゆる「仕事」を協働していけるような家庭が近い将来増えていくことを期待します

全4回にわたり「シリーズ 社保と残業と私」をお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
年金の今後から始まり、ご自身の社保加入の有無や給与明細の見方、女性の今後の働き方や職場のあり方など盛り沢山でしたが、皆様が生活する上で少しでもお役に立てる内容がありましたら幸いです。

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