出向した場合、「出向元」と「出向先」のどちらの就業規則に従うのでしょうか。

当事務所には、色々な立場の方にご依頼に来ていただきます。
今回は、「出向している方」の労働条件等について、記載していきたいと思います。

出向している方の労働契約関係は、「出向元」と「出向先」の両方の間において成立します。では、出向している方に対する就業規則は、「出向元」と「出向先」のどちらのものが適用となるのでしょうか。
原則として、出向している方と「出向元」と「出向先」の三者間で合意決定するべきものではありますが、就業規則の変更は使用者が一方的に適用関係を定めることも可能なため、「出向元」と「出向先」の労働条件が異なる場合には、「出向元」と「出向先」との間で協議した上で決定するべきものとされています。

それでは、「出向元」と「出向先」との間で、出向している方の就業規則の適用関係を定めなかった場合は、どのように考えていけばよいのでしょうか。

次の2点については、原則として「出向元」就業規則が適用されます。

■ 賃金関係
 原則として、「出向元」での労働条件が維持されると考えるのが通常だからです。

■ 退職関係 
労働者の地位の喪失に関するものは、すべて基本的な労働契約の当事者である「出向元」
との関係で定められるものであるからです。


次の2点については、原則として「出向先」就業規則が適用されます。

■ 始業・終業時刻、労働時間等の労務提供に関する事項
 「出向先」の使用者が、出向している方の指揮命令をするからです。

■ 服務規律に関する事項
 出向している方の労務の提供は、原則として「出向先」に対してなされるからです。


次の点については、「出向元」と「出向先」両方就業規則が適用されます。

■ 懲戒関係
 「出向先」で懲戒事由に該当する行為を行った場合には、同時に「出向元」での懲戒事由に該当する行為であると考えることもできるからです。

次の点については、いずれの就業規則に適用関係があるか定めていないと後々のトラブルの元になるので、出向される方は、いずれの就業規則に適用するか予め確認をしておくことをお勧めします。

■ 休職関係
 休職期間の満了に伴い退職・解雇等労働契約が終了するものと定めている場合は「出向元」の就業規則が適用されると考えられますが、休職とは労務提供義務を免除するという側面もあるため、「出向先」の就業規則が適用されるとも考えられるからです。


なお、労働条件とは少し異なりますが、出向している方の労災は「出向先」の労働保険が適用となります。

このように、出向している方は、「出向元」と「出向先」のいずれの就業規則が適用になるのか複雑です。
今後、出向される方は、出向前にご自身の労働条件について必ず確認をされることをお勧めします。

当事務所には、残業代請求や不当解雇その他の会社とのトラブルについて、精通している弁護士がおります。
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