「解雇」のエトセトラ。

仕事上、離職票雇用保険被保険者離職証明書)を見ることが多いのですが、じっくりと見るたびに「『離職理由』の選択肢ってたくさんあるなぁ。」と感じます。
でも、まだまだ終身雇用が色濃い日本において、「離職する」というのは人生でとても重大なことで、「自己都合」であれ「会社都合」であれ離職理由も十人十色あるはずです。そう考えると離職票の「離職理由」の選択肢は少ないのかもしれません。

そんな数多い「離職理由」の中で、今回は「解雇」について記載していきます。「解雇」にも色々な種類があります。ニュースやドラマなどで「懲戒免職」や「クビ」、「整理解雇」などという言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、これらはどう違うのでしょうか。

「解雇」とは・・・
まず「解雇」とは、雇用者側から被雇用者側へ、労働契約の解除を行うことです。解雇については被雇用者の同意は不要となっており、雇用者側の通告によって成立します。
大きくは懲戒解雇と普通解雇に分けることができ、普通解雇として整理解雇、諭旨解雇などがあります。

「懲戒解雇」
懲戒解雇とは、被雇用者側の長期の無断欠勤、会社の金品の横領、職務・会計上での不正、重大な過失による業務の妨害、重大な犯罪行為などの理由により行なわれる解雇です。懲戒解雇はその理由となる事由とこれに対する懲戒の種類・程度が就業規則に明記されている必要があり、また、当該就業規則が周知されている必要があります。就業規則に定めがない事由で従業員を懲戒解雇してはなりませんし、就業規則を作成していない企業では、従業員を懲戒解雇すること自体が法律上許されていません。その理由としては、使用者の胸先三寸で懲戒処分を受けるような状況では、従業員は安心して働くことができないので、労働基準法では就業規則に定めなき懲戒処分を禁じているということです。
なお、「懲戒解雇」は、公務員の場合は「懲戒免職」と呼ばれます。懲戒解雇の場合、事前の解雇予告や手当の支給はされず、労働基準監督署長の解雇予告の除外認定により即時解雇となります。また、退職金の支給も多くの場合ありません。懲罰処分であるため、再就職が非常に困難となる背景もあり、酌量として諭旨退職を勧めることも多くあります。

「普通解雇」
普通解雇とは会社の都合により行なわれる懲戒解雇以外の事由による解雇の事をさします。一般的に、単に解雇(クビ)と言う場合は、普通解雇を指します。判例から区別されることもありますが、整理解雇も普通解雇に属するものです。
普通解雇の事由は就業規則に定められている必要があり、客観的に合理性があるか、解雇としての相当性があるか審査されます。また、普通解雇にあたって雇用者は被雇用者へ30日前までの解雇予告、あるいは解雇予告手当ての支給が必要となります。

「整理解雇」
整理解雇とは、事業の継続が現在、あるいは将来予想される困難について、人員整理として余剰労働者を解雇することです。一般的に言う「リストラ」とはこの整理解雇にあたります。普通解雇に属するものですが、企業の経営上の理由により行なわれる解雇であるため、区別して呼びます。
整理解雇の合理性・相当性の判断に整理解雇の4要件というものがあり、(1)本当に人員整理の必要性があるか(2)解雇回避の努力義務を行なったか(3)被解雇者選定に合理性があるか(4)説明・協議は十分に行なわれたか、の4要件のすべてに適合しているかをもとに有効・無効の考慮がされます。

「諭旨(ゆし)解雇」
「諭旨解雇」とは、使用者が労働者に対して行う懲戒処分の一つで、最も重い処分である懲戒解雇に相当する程度の事由がありながら、会社の酌量で懲戒解雇より処分を若干軽減した解雇のことをいいます。「諭旨」は、趣旨や理由を諭し告げるという意味です。労働者の責によって生じた業務上の支障や損害について、使用者が強制的に処分を下すのではなく、使用者と労働者が話し合い、あくまでも両者納得の上で解雇処分を受け入れるのが諭旨解雇の概念です。
懲戒解雇は即日解雇、退職金なども支給されませんが、諭旨解雇の場合は労働基準法に則り、30日前に通知、そして退職金が支払われるケースが多いようです。間違えやすい概念として退職勧奨がありますが、退職勧奨は懲戒処分ではなく会社都合退職の扱いになり、一方、諭旨解雇は自己都合退職扱いなので全く異なる方法です。

上記に記したとおり、特に「懲戒解雇」の場合は、会社に就業規則があること、懲戒解雇の理由となる事由とこれに対する懲戒の種類・程度が就業規則に明記されている必要があり、また、当該就業規則が周知されている必要があります
また、「普通解雇」においても、その事由は就業規則に定められている必要があり、客観的に合理性があるか、解雇としての相当性があるかの審査が必要となります。

会社から何の前兆もなく突然解雇を言い渡された場合、まず就業規則を確認してください。就業規則の記載事項、また解雇理由が客観的に見て合理性があるかを確認した上で、やはり納得がいかない場合は、「不当解雇」である可能性が高いです。一度専門家に相談してください。

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