「答え」は給与明細の中に・・・!? 〜 シリーズ 社保と残業と私 3〜

2014年6月23日のYahoo!ニュースに、東京都葛飾区の運送会社の社員が同社を相手取り「固定残業手当」を無効とする訴訟を起こしたという記事が出ていました。記事によりますと、訴えを起こした社員は、多い月では206時間を超える残業をしていたにもかかわらず、給与の「月30万円」は「基本給15万円プラス固定時間外手当15万円」と決められていて、何時間働いても「月15万円」の残業代しか支払われていませんでした。また、この15万円が何時間分の残業に当たるのか、深夜割増賃金が含まれているのか、ということも不明であるとのことです。

給与の手当の1つである、いわゆる「固定残業手当」(名称としては、「職務時間外手当」や「業績時間外手当」等とされている場合も多いです)ですが、こちらのブログにも何度も取り上げているように、いくつかの要件を満たさなければ認められません。
要件の1つに、「賃金に含まれる時間外割増賃金の部分が明確に区分され、示されていること」というものがあります。これは、例えば給与明細等で、時間外割増賃金が、賃金の中で「いくら」で「何時間分の残業代」かが明確に区分され、示されていることが必要である、ということです。「固定残業手当」が包括している残業時間を超えて残業をした場合、その分の残業代は支払われなければいけないため、給与明細を見ることで、自身がその月に「固定残業手当以上の残業をしていたかどうか」がすぐにわかることが理想です。(給与明細に残業時間の記載がないことが違法であるということではありません。)

前回の<社会保険の未加入は自己責任なのでしょうか・・・。 〜 シリーズ 社保と残業と私 2〜>にも記載しましたが、雇用保険社会保険の加入の有無も給与明細を見ることでわかります給与明細にはご自身の「労働状況」がわかる大切なヒントが隠されています。

給与明細の内容は、大きく次の3つの項目に分けられます。
(1)勤怠項目
(2)支給項目
(3)控除項目

(1)勤怠項目には、「出勤日数」や「欠勤日数」、「有給日数」、「有給残日数」、「残業時間」などの項目があり、1ヶ月の勤務状況がわかるようになっています。会社によっては「所定労働時間」や「所定労働日数」という項目もあります。
(2)支給項目には支払われる金額が記載されているのですが、例えば「基本給」と「諸手当」(精皆勤手当、通勤手当、家族手当を除く)を足した金額を上記の「所定労働時間」で割った場合、自身の時給単価を算出することができます。また、「残業手当」を「残業時間」で割っても、自身の残業単価や時給単価を知ることが可能です。
(3)控除項目には、雇用保険料や社会保険料所得税、住民税などの金額が記載されています。この項目により、自身が社会保険などに加入しているかわかります(悪質な会社ですと、社会保険料を控除しているのに加入手続きをしていないという場合もありますので、注意をしてください。)

このように、給与明細を見ることで、自身の1ヶ月間の働き方や時給単価、社会保険等の加入状況がわかりますので、給与明細を会社からもらったら一度じっくりと確認をしてみてください。新しい発見があるかもしれません。また、給与明細は、特に残業代の請求を考えている場合、大切な証拠の1つとなりますので、捨てずに保管をしておくことをお勧めします。

さて、シリーズでお伝えしております「社保と残業と私」ですが、最終回の次回は「女性が働きやすい社会になるためにはどうすれば良いか」について考えていく予定です。
将来の年金額を減らさないためには、女性や高齢者の就労を増やすことが必須であるにもかかわらず、女性が働きにくい職場環境が増えています。この現状をどう打開していけば良いのかということについて、考えていきたいと思っています。
最近世間を騒がせている「セクハラヤジ」の一件でますますデリケートになったのではないかと思われる「女性問題」について、関係している法律や国の調査結果等をご紹介しながら今後の展望について考えていきますので、お付き合いいただければ幸いです。

当事務所には、残業代請求や未払い賃金その他の会社とのトラブルについて、精通している弁護士がおります。
是非、経験豊富な日比谷ステーション法律事務所へご相談ください。