会社の帰り道に寄り道。どこまでが「通勤」?〜シリーズ 通勤災害3 〜

「シリーズ 通勤災害」では、「どのような場合に『通勤災害』にあたるのか」を具体的な事例をあげながら紹介しています。シリーズ最終回の今回は、「通勤中に寄り道をした場合、『通勤』ではなくなるのかどうか」について記載します。

例えば、会社の帰りに惣菜等を買いにスーパーに行き、買い物をしている最中に転んでケガをした場合は、「通勤災害」にはなりません。しかし、買い物を終えて帰路についている最中に転んでケガをした場合は、「通勤災害」になる可能性が高いです

通勤途中の寄り道、つまり「逸脱・中断」について、労働者災害補償保険法では次のように定めています。

「労働者が、移動の経路逸脱し、又は移動中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間びその後の移動は、通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りではない。」

基本的には、通勤の途中で逸脱又は中断があると、その後は原則として通勤とはなりません。しかし、日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は再び通勤となります。なお、厚生労働省令で定める逸脱・中断の例外となる行為は以下のとおりです。

A. 日用品の購入その他これに準ずる行為
B. 職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育、その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
C. 選挙権の行使その他これに準ずる行為
D. 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
E. 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)

なお、「A. 日用品の購入その他これに準ずる行為」は、具体例として、帰途で惣菜等を購入する場合独身者が食堂に食事に立ち寄る場合クリーニング店に立ち寄る場合、などが挙げられています。

「日常生活上必要な行為」以外にも、ささいな行為を行うにすぎなければ、逸脱・中断には該当せず、通勤災害制度の適用に影響はありません。
「ささいな行為」の具体例は次のとおりです。
① 帰途に経路の近くにある公園で短時間休息する場合
② 経路上の店で渇きをいやすため極く短時間、お茶、ビール等を飲む場合
③ 手相見や人相見に立ち寄って極く短時間手相や人相を見てもらう場合 等

「通勤災害」についてシリーズでお伝えしてきました。気づかれた方も多いかと思いますが、「通勤災害」については、数多くの細かい具体例が存在します。それだけ労災として認定される要件は厳しいということになります。

しかしながら、通勤災害は誰にでも起こりうることです。通勤中などでいざ事故に遭遇したときには、「通勤災害」になるかもしれないと、会社に相談してみてください。
会社が全く応じようとしてくれない、相談した結果理不尽な扱いを受けた、などのようなことがあれば、専門家に相談することをお勧めします。

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