この場合通勤災害なのに、あの場合通勤災害じゃないのですか?「通勤災害」の色々・・・。〜シリーズ 通勤災害2 続き 〜

前回、「通勤災害の範囲」について労働者災害補償保険法で定められている次の条文を紹介し、ポイント毎に具体例を挙げながら解説していきました。

通勤とは(A) 労働者が、就業に関し(B)次に掲げる移動(C)を、合理的な経路及び方法(D)により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くもの(E)とする。
(1) 住居と就業の場所との間の往復
(2) 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
(3) 住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る)」

今回は、前回ご紹介できなかった「C. 『次に掲げる移動』」についてお伝えします。

C. 「次に掲げる移動」
「次に掲げる移動」とは、次の(1)から(3)のいずれかに該当する移動であることをいいます。
(1)住居と就業の場所との間の往復
 「住居」とは、労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所で、本人の拠点となっている所をいいます。ただし、ストライキ、台風等のために臨時に使用するホテル等についても一時的な居住場所みなされる場合もあります。
<「住居」の具体例>
・通常は家族のいる所から出勤するが、別のアパートを借りていて、早出や長時間の残業の場合には当該アパート等に止まり、そこから通勤する場合には、家族の住居とアパートの双方が住居。
・夫の看護のため、姑と交代で1日おきに寝泊まりしている病院。
 「就業の場所」とは、業務を開始し、又は終了する場所をいいますが、会議・研修などの会場や会社の行う行事の現場などもこれに含まれます。
<「就業の場所」の具体例>
・全員参加で出席扱いとなる会社主催の運動会の会場等。

(2)厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
 こちらは複数就業者の場合を指していて、第1事業所から第2事業所への移動の途中に災害にあった場合は通勤災害となります。また、この場合は、終点たる事業所(第2事業所)の保険関係で取り扱います。
ただし、第1事業所が就業規則等で二重就労を禁止している場合、第1事業所にとっては、第2事業所での就労自体が社内規則違反であり、また、第2事業所への移動中の事故は、単なる「その労働者の私傷病」に過ぎないということになります。

(3)住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る)」
 厚生労働省令で定める要件」とは、かなり簡単に記載すると次の通りです。
・帰省が定期的に行われていること。
・妻(夫)が住む自宅への帰省であること。
・妻(夫)がいない場合は、子が住む自宅への帰省であること。
・妻(夫)、子がいない場合は、要介護状態の父母・親族が住む自宅への帰省であること。

また、上記の移動については、就業の前後2日間であることが条件となっています。ただし、合理的な理由があれば2日以上前の移動でも認められる場合があります

前回も記載しましたが、通勤災害と認められるか否かで、被災労働者に対する公的な補償は大きく違ってきます。もちろん業務災害についても同じです。
業務中または通勤中で被災した場合、労災の申請が出来るかもしれないということを思い出してみてください。

「通勤災害」について比較的マニアックに記載してきましたが、次回はもう少しマニアック度を上げて「通勤中の寄り道」についてご紹介します。

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