職場の飲み会参加後、帰り道に転倒してケガ・・・。通勤災害になりますか? 〜シリーズ 通勤災害1 〜

新年度に入り、新入社員の歓迎会やお花見など、職場での飲み会の回数が多い時期だったのではないかと思います。
業務終了後の職場の飲み会に参加した帰り道、酔って転倒するなどしてケガをしてしまった場合、通勤災害の対象となるのでしょうか。

そもそも通勤災害が認められるようになったのは、通勤は業務に従事する上で避けることのできない当然の行為であり、全くの私的行為ともいえないということからです。
そのため、通勤災害として認められるために、まず業務との時間的な前後関係が密接に結びついていなければいけません

それでは、業務後に職場の飲み会やその他イベントに参加した場合、「業務」と「通勤」との関係は密接であると言うことができるのでしょうか。

この件について、今までの判例を見ていると、「その飲み会やイベントが『業務』かどうか」「業務終了後、何時間が経過したか」が問題になっています。
例えば、平成20年6月25日に東京高裁で判決が出された「遺族給付等不支給決定処分取消請求控訴事件」は、主任会議終了後に社内で開かれた会合(酒類の提供あり)に参加した後、帰宅途中に地下鉄の階段で転落死した男性会社員の遺族が労災認定を求めた訴訟の控訴審だったのですが、東京高裁は、「会合が『業務』と言えるのは開始後2時間程度である」と指摘し、その後の約3時間の飲酒は業務といえないとして、労災を認めた一審東京地裁判決を取り消し、遺族側の請求を退けています。

この他に、病院院長が、職員らが企画した業務終了後の食事会に参加後に事故に遭い死亡した事件(大阪地判平成20.4.30)では、食事会が業務として行われたものでないことや、業務終了後3時間超の時間が経過していることなどから通勤災害が認められませんでした。一方、社外の飲食店で開催された管理者会およびその後の懇親会に参加した後、自転車で帰宅中に転倒し死亡した事件(仙台地判決平成9.2.25)では、管理者会が業務としての性格を持ち、懇親会は同一の場所で約55分間程度行われていたに過ぎず、出された料理とアルコールも少量であったことなどから、通勤災害が認められました

このように、「通勤災害」として認められるかどうかは、その飲み会やイベントの性質(趣旨、内容、参加の強制等)やその時間、アルコールの摂取量などを踏まえた上で総合的に判断されると考えられます

「通勤災害」については、業務時間後の飲み会やイベントの参加の他にも、通勤途上の寄り道の場所や方法についても詳しく決められています。
こちらについては、次回ご紹介します。

特に「通勤災害」については、単独事故ではなく第三者も絡む交通事故などもあり、そうなると事態はもっと複雑になり解決が難しくなることも多いです。

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