安全配慮義務違反!? 〜 シリーズ 東芝うつ病事件1 最高裁判決!〜

東芝うつ病事件とは、過重労働からうつ病になって休職したのに解雇されたのは不当だとして、東芝の元社員の女性が東芝に解雇無効や損害賠償等を求めた事件です。
平成26年3月24日に、こちらの事件について最高裁判決が言い渡されました。

この裁判においては、解雇無効の点は既に確定しています。東京地裁は2008年、解雇無効を認めて未払い賃金と損害賠償計約2,800万円の支払いを命じましたが、東京高裁判決(11年)は、女性労働者が神経科への通院を会社に申告していなかったのであるから、女性には過失があり、また、女性自身の個体の脆弱性がある等として過失相殺を認め、賠償額を減らしました。
最高裁では減額理由の妥当性が争われました。つまり、労働者が自身のメンタルヘルスに関する情報を会社に申告しなかったことは、損害賠償額を決める上での労働者の落ち度になるかどうか、という点が争点となりました。この点について最高裁は、女性労働者が会社側に体調不良を訴えていたこと、欠勤していたことなどを理由に「会社は業務軽減措置をとることは可能だった」と判断し、改めて賠償額を算定させるため、審理を高裁に差し戻しました。
以下では、判決文からその該当部分を引用します。

「上記の業務の過程において,上告人が被上告人に申告しなかった自らの精神的健康(いわゆるメンタルヘルス)に関する情報は,神経科の医院への通院,その診断に係る病名,神経症に適応のある薬剤の処方等を内容とするもので,労働者にとって,自己のプライバシーに属する情報であり,人事考課等に影響し得る事柄として通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される性質の情報であったといえる。使用者は,必ずしも労働者からの申告がなくても,その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っているところ,上記のように労働者にとって過重な業務が続く中でその体調の悪化が看取される場合には,上記のような情報については労働者本人からの積極的な申告が期待し難いことを前提とした上で,必要に応じてその業務を軽減するなど労働者の心身の健康への配慮に努める必要があるものというべきである。」

会社は、今後ますます従業員の皆さんの労働時間や体調管理に配慮が必要となります。
こちらの事件の第一審と第二審については、次回でお伝えします。

当事務所には、残業代請求や未払い賃金その他の会社とのトラブルについて、精通している弁護士がおります。
是非、経験豊富な日比谷ステーション法律事務所へご相談ください。