うつ病で解雇?原因は業務上のはずなのに! 〜 シリーズ 東芝うつ病事件2 第一審(地裁)の判決 〜

前回お伝えした「東芝うつ病事件」について、今回は第一審(地裁)の判決について書いていきます。

<事件の概要>
ある女性労働者が、過重な業務が原因でうつ病となり休職したにもかかわらず、休職期間満了を理由に解雇されたのは不当として、勤務先の会社を解雇無効や安全配慮義務違反で訴えた事件です。

<争点>
この事件の争点は、次の3点です。
1.解雇の有効性
 うつ病の原因が業務上であるかどうかです。業務上が原因の休職である場合、休職期間満了による解雇は禁止されています。
2.安全配慮義務違反の有無
 会社は、女性労働者の業務を定めて管理する際に、業務の遂行に伴う疲労心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意していたかどうかです。安全配慮義務違反となった場合、会社側の債務不履行となります。
3.女性に支払われるべき賃金および損害賠償の額
  

<判断のポイント>
1.解雇の有効性
  次の2点から、うつ病は業務上の疾病だと認められ、解雇は無効とされました。
① 法定時間外労働時間(法外残業時間)が平均的に「60時間」を超えていたこと、また、繁忙かつ切迫したスケジュール下にあったこと 
② 今まで精神疾患になったことがなかったこと、また家族に精神疾患を発症した人がいなかったこと 

2.安全配慮義務違反の有無
  次の2点から、うつ病の発症は会社の安全配慮義務違反によるものであるとしました。(ただし、こちらの安全配慮義務違反は、会社が女性の業務を限定したり、女性に療養を勧めるなどをし始めた時期までのものとなりました。)
① 女性が長時間労働をしていることを上司も知っていたこと
② 「時間外超過者健康診断」の問診結果から、女性が自覚症状を訴え始めていることを認識していたこと

3.女性に支払われるべき賃金および損害賠償の額
  解雇は無効であり、本件解雇後も女性は賃金請求権を失わないとして、会社側に欠勤期間中の賃金も支払う義務があるとしました。(月額は「年収÷12」で計算)
  ただし、金額については、健康保険組合から支給された傷病手当金等を控除した金額としました。
  
地裁の判決により、会社側は、休職期間満了に伴う解雇(自然退職)には大きなリスクを伴うこととなりました。つまり、特別過重な業務負担がかかっていなくても、うつ病の原因が個人的なものであるという証明ができなければ、解雇は無効になる可能性は高いです。
また、会社側が適切な安全配慮の措置を取っていなければ、会社に安全配慮義務違反による賠償責任を問うこともできます。

この後、女性労働者も会社側も双方が控訴をしています。
第二審の高裁判決については、次回にお伝えします。

長時間労働で体調を崩され休職された方、また、そのような過重労働について会社が何一つ対応してくれない方、一度専門家に相談してみてください。

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