解雇に関する法規制 〜 シリーズ 「解雇」を学ぶ 2 〜

シリーズ第1回目の前回は、「解雇の種類」について記載いたしました。
第2回目の今回は、「解雇に関する法規制」について記載してまいります。

解雇は労働者に大きな打撃を与えます。そのため、労働契約法16条では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています。これは解雇濫用法理と呼ばれています。
解雇濫用法理は、解雇について大変厳しい規制であり、実際に解雇が争われる場合は、解雇濫用法理により解雇が濫用になるかどうかが主な争点になります。

さてここで、解雇の法的な規制を見ていきましょう。

解雇の法的な規制には、大別すると、1.解雇理由についての規制2.解雇期間についての規制3.解雇手続についての規制 があり、それぞれ労働基準法等により具体的に定められています。

1.解雇理由についての規制 (※ 法律の正式名称は今回のブログの一番下に記載しています。)
次の理由による解雇は禁止されていますので、解雇は無効となります。

a. 国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇の禁止(労基法第3条)
b. 年次有給休暇取得を理由とする解雇の禁止(労基法第136条)
c. 労働基準法違反の申告を監督機関(労働基準監督署等)にしたことを理由とする解雇の禁止(労基法第104条第2項)
d. 育児介護休業取得と子の看護休暇の申出と取得を理由とする解雇の禁止(育児介護休業法第10条・16条)
e. 育児介護に関する紛争について、労働者が都道府県労働局に対して紛争解決援助を求めたことを理由とする解雇の禁止(育児介護休業法第52条の4第2項)
f. 性別を理由とする退職勧奨、定年、解雇の禁止(雇用機会均等法第6条 4)
g. 女性労働者の婚姻、妊娠、出産を理由とする解雇の禁止(雇用機会均等法第9条第2項・第3項)
h. 産前産後の休業の請求と取得を理由とする解雇の禁止(雇用機会均等法第9条第3項)
i. 通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者についての差別的解雇の禁止(パートタイム労働法第8条第1項)
j. パートタイム労働法に関する紛争について、パート労働者が都道府県労働局に対して紛争解決援助を求めたことを理由とする解雇の禁止(パートタイム労働法第21条第2項)
k. 労働者が均等法に基づく紛争解決の援助を求めたり、調停を申請したことを理由とする解雇の禁止(雇用機会均等法第17条第2項)
l. 不当労働行為の不利益取扱いとなる解雇の禁止(労組法第7条第1項)
m. 都道府県労働局に対して個別解決紛争解決の援助を求めたこと を理由とする解雇の禁止(個別労働紛争法第4条第3項)
n. 公益通報(いわゆる内部告発)したことを理由とする解雇の禁止(公益通報者保護法第3条)

2.解雇期間についての規制
次に掲げる期間中には、解雇をすることが禁止されています。

a. 労働者が業務上傷病により療養のため休業する期間およびその後30日間(労基法第19条)
b. 産前・産後の女性が労働基準法第65条に定める産前産後休業をする期間およびその後30日間(労基法第19条)
c. 妊娠中や出産後一年を経過しない女性労働者に対する解雇の禁止(雇用機会均等法第9条第4項)

3.解雇手続の規制
解雇の場合、次の手続きが必要になります。

a. 使用者は、労働者を解雇する場合には、原則として解雇の30日前に予告するか、あるいは予告の代わりに予告手当を支払わなければならない (労基法第20条第1項)
b. 使用者は、労働者が請求した場合は、解雇理由の証明書を発行しなければならない (労基法第22条第2項)

いかがでしたでしょうか。
解雇がとても厳しく規制されていることを、感じていただけたのではないでしょうか。
もし「解雇された」・「解雇されそう」という状態の方で、上記に当てはまる方がいらしたら、それは会社側が法律違反をしている可能性があります。
是非とも専門家にご相談ください。

今回は、解雇の「法的な規制」を記載しましたが、次回は「法律以外の解雇の規制」について記載していく予定です。

労働問題とは別のお話にはなりますが、日比谷ステーション法律事務所では、6月から毎月セミナーを行う予定です。
6月の内容は、 「会社に求められる反社会的勢力への対応方法」です。
セミナーの詳細はこちらに記載しておりますので、もしご興味のある方がいらっしゃいましたら、是非ともご参加ください。

http://www.lawcenter.jp/seminar/20150624_%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%81%AB%E6%B1%82%E3%82%81%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B%E5%8F%8D%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%9A%84%E5%8B%A2%E5%8A%9B%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%AF%BE%E5%BF%9C%E6%96%B9%E6%B3%95.html


当事務所には、残業代請求や不当解雇その他の会社とのトラブルについて、精通している弁護士がおります。
是非、経験豊富な日比谷ステーション法律事務所へご相談ください。

(※)法律の正式名称
労基法 : 労働基準法
育児介護休業法 : 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
雇用機会均等法 :雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
パートタイム労働法 : 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
労組法 : 労働組合
個別労働紛争法 : 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律