解雇の種類とその違い 〜 シリーズ 「解雇」を学ぶ 1 〜

当事務所には,不当解雇についてご相談に来られる依頼者の方が多くいらっしゃいます。
依頼者の方から詳しいお話を聞いていますと、「解雇」の法規制やその他の制限などを詳しくご存知ない事業主の方が多いと感じられます。そのため、解雇理由が客観的に合理的でなく、解雇が「無効」となることが多くあります。
実際に解雇をされた方、またはされそうになっている方も、もしかしたらその解雇が「無効」となる可能性が高いと気がついていない方も多くいらっしゃるかもしれません。

このブログでも何度か解雇について解説をしていますが、今回は「解雇」全般について判例等を交えながらシリーズとして詳しくお伝えしていく予定です。
是非参考にしてください。

第1回目の今回は、「解雇の種類」について記載いたします。

まず、解雇とは、労働契約が継続中に使用者の一方的な意思表示によって労働契約を解約するものです。大別すると、 「普通解雇」「懲戒解雇」の2つがあります。

1.普通解雇
 普通解雇は、使用者の解雇権(民法627条・628条)に基づく解雇で、正社員のように期間の定めのない労働契約の場合は、民法627条において二週間の予告で普通解雇できるとされています。しかしながら、労働基準法20条により「二週間」は「少なくとも三十日前」と修正されています。
ここで一つ疑問点が出てきます。民法で定められていることが、なぜ労働基準法の内容に修正されるのでしょうか。

法律は規定する内容によっていくつかのカテゴリーに分類されます。その一つに「一般法」「特別法」による分類があります。
「一般法」とは、広く原則となる法律であり、市民同士のルールを定めている民法は、「私法の一般法」と言われています。一方、「特別法」とは、特別な人や時期、地域に限って適用される法律で、憲法27条2項の労働条件法定主義に基づき労働条件の最低基準を定めている労働基準法は、「民法の特別法」と言われています(なお、労基法は「刑法の特別法」でもあります)。
「特別法」が定められている分野では、「特別法」が「一般法」に優先します。そのため、上記のように、民法での「二週間」が労基法で「少なくても三十日前」と修正されることになります。

各条文を見てみると、次のようになっています。

民法627条〕
1 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。

民法628条〕
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

労働基準法20条〕
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでない。

このように見ていると、労基法ではあくまで「使用者」に対して「少なくても三十日前」と規定しているので、「労働者」には民法の「二週間」が当てはまることになります。

また、解雇は解雇権濫用法理(労働契約法16条)により厳しく制限されていますし、期間の定めのある労働契約の場合であっても民法628条においてやむを得ない事由があるときは期間中でも解雇できるとされていますが、これも労働契約法17条で厳しく制限されています。

「整理解雇」という言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、こちらは普通解雇の一種で、企業の業績が悪化したため、人員を削減する目的で解雇を行う等、使用者の事業経営上の理由に基づく解雇のことです。

2.懲戒解雇と諭旨解雇
 懲戒解雇と諭旨解雇は、使用者の懲戒処分としてなされるもので、いずれも就業規則の懲戒規定に基づいて行われます
 懲戒解雇は、懲戒処分としては最も重いもので、就業規則では解雇予告をしない即時解雇とし、正社員の場合は退職金を全部不支給とする取扱いが多いです。
 一方、諭旨解雇は、①懲戒の対象となる本人から退職届を退出するよう勧告し、退職届が提出されれば退職として取り扱い、②もし退職届が提出されない場合には懲戒解雇とする、という2つの内容を含んだ懲戒処分です。
 懲戒解雇と諭旨解雇については、懲戒権の濫用となる場合は無効とされます。(労働契約法15条)

その他にも「内定取消し」「本採用拒否」も、法的には普通解雇です。
「内定取消し」については、企業が採用見込者に採用内定の通知を行った時点で、原則として使用者である企業と採用内定者との間に労働契約が成立したと解釈されているため、その後に内定取消しをすることは、労働契約を解約することなので、法的には解雇となります。
「本採用拒否」については、入社後に設定される「試用期間」の最中に不適格な行為があったときなどになされますが、すでに採用内定あるいは入社の時点での労働契約の成立は明らかなので、こちらもやはり法的には解雇となります。

以上、解雇の種類をご紹介しました。

次回は解雇予告や解雇制限など、「解雇に関する法規制」についてお伝えいたします。

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