「『諭旨解雇』ってなに?」

2014年7月14日のブログ「『解雇』のエトセトラ。」で、様々な種類の解雇について記載しましたが、今回はその中でも一番聞き慣れてない言葉なのではないかと思われる「諭旨解雇」について具体的に記載していきます。

先日のブログには「『諭旨解雇』とは、使用者が労働者に対して行う懲戒処分の一つで、最も重い処分である懲戒解雇に相当する程度の事由がありながら、会社の酌量で懲戒解雇より処分を若干軽減した解雇のことをいいます。」と記載しましたが、もし「諭旨解雇」となった場合には、どのような扱いを受けることになるのでしょうか。

「諭旨」とは、趣旨や理由をさとし告げるという意味で、「諭旨解雇」とは、労働者の責により生じた業務上の支障や損害について、使用者が強制的に処分を下すのではなく、使用者と労働者の間でじっくり話し合い、両者納得の上で解雇を受け入れるという意味です。
懲戒解雇と諭旨解雇の扱いの違いは、例えば懲戒解雇の場合は退職金などが支給されないことが多いですが(懲戒解雇になれば自動的に退職金が不支給になるのではなく、退職金規程等にその旨の記載が必要です)、「諭旨解雇」の場合は貢献度等によって、その全部あるいは一部が支給されるなど、処分によって労働者が被る不利益が軽減される傾向にあります。

ただ、「諭旨解雇」は、本来なら懲戒解雇に処すべき労働者に対する「温情処分」であるので、その手続きや有効性は、懲戒解雇と同様に法律の規制を厳しく受けることになります。会社が「諭旨解雇」処分を行うには、あらかじめ就業規則に諭旨解雇事由が明記されていることはもちろん、会社からの諭旨が行われ、労働者本人にも弁明の機会が与えられていることなどが必要です。

「諭旨解雇」と似たような言葉に「諭旨退職」があります。「諭旨解雇」と「諭旨退職」の違いは、本人の退職願の有無にあります。つまり、懲戒解雇相当の労働者に対し、自ら退職するよう理由を諭して退職願の提出を促し、依願退職した形とするのが「諭旨退職」です。ちなみに、「諭旨退職」の場合はあくまで自発的な退職となるため、解雇予告は不要となります。

なお、『労働法 第十版』(菅野和夫著)では、「諭旨解雇」や「諭旨退職」について次のように記載されています。

「企業によっては、懲戒解雇を若干軽減した懲戒処分として『諭旨解雇』を設けているものがある。また、退職願もしくは辞表の提出を勧告し、即時退職を求める『諭旨退職』と呼ばれるものもある(所定期間内に勧告に応じない場合は懲戒解雇に処する、という取扱いをする企業が多い)。これらの場合、退職金は全額ないし一部が不支給とされたり通常の自己都合退職どおりに支給されたりする(花見忠=深瀬義郎編著・就業規則の法理と実務203頁)。諭旨退職は依願退職のような形式をとるが、実際上は厳然たる懲戒処分の一種であるので、その法的効果は懲戒解雇同様に争いうると解される(同旨、下井・労基法399頁)。」

「諭旨解雇」について、少しはイメージいただけましたでしょうか。
もし「諭旨解雇」をほのめかされた時は、会社の就業規則にその規定があるかまず確認してみてください。そして、その後に専門家に相談してみることをお勧めします。

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