法律以外の解雇の規制 〜 シリーズ 「解雇」を学ぶ 3 〜

「『解雇』を学ぶ」のシリーズ第3回目の今回は、「法律以外の解雇の規制」についてお伝えします。

解雇は、労働者の生活に大きな打撃を与えるので、シリーズ第2回目「解雇に関する法規制 〜 シリーズ 『解雇』を学ぶ 2 〜」に記載した法令による禁止や制限以外にも、問題とされることがあります。
それが次の2点になります。

1.労働協約による解雇の制限
労働協約とは、使用者と労働組合との間で労働条件等について合意し、労使が署名押印または記名押印をした書面のことをいいます。労働協約の内容のうち、組合員の労働条件その他の待遇に関する基準を定めた部分は、組合員の労働契約の内容になります。そのため、解雇が労働協約の定めに違反する場合は、原則として無効となります。
 普通解雇の場合は解雇権の濫用(労働契約法第16条・第17条第1項)により、懲戒解雇の場合は懲戒権の濫用(労働契約法第15条)により無効ということになります。

 〔労働契約法〕
第15条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

第17条第1項 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

2.就業規則による解雇の制限
 
就業規則は、その内容が合理的で、労働者に周知されていれば、労働契約の内容になります。
就業規則では、解雇および懲戒をする場合には、解雇および懲戒に関する規定も必ず設けなければならいとされているため、使用者の定める就業規則において、解雇に関する規定がない場合に、使用者は労働者を解雇できるか否かが問題となります。
 A.懲戒解雇の場合
原則として、就業規則の作成義務のある使用者は、就業規則の懲戒規定に基づき初めて懲戒処分ができることになっています。逆に言うと、就業規則に懲戒処分に関する規定がないと懲戒処分ができないということになります。
 B.普通解雇の場合
解雇権の根拠が民法627条および628条にあるので、就業規則に普通解雇の規定がなくても使用者は普通解雇できるということになります。

なお、労働基準法では、労働者が退職や解雇をされた場合、退職・解雇の紛争防止や再就職活動等のために、在職期間、従事した業務の種類、役職等の地位、賃金、退職事由・解雇事由について請求書を提出したときには、使用者は遅滞なくこれを交付しなければならないと定めています。
これが「退職証明書」や「解雇理由証明書」と呼ばれる書類になります。
解雇をされた際は、解雇理由をはっきりとさせるためにも「解雇理由証明書」を交付してもらうことをお勧めします。

次回は、「解雇予告手当」について記載する予定です。

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