一方的な一時金の減額は許されますか???

2014年12月25日の毎日新聞によりますと、学校法人「青山学院」の教職員285人が、一方的な一時金の規定廃止によって支給額を減額されたとして、学院を相手取り、規定との差額にあたる総額約5,000万円の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こしたとしています。

訴状などによりますと、教職員の一時金は1953年以降就業規則で定める規定に基づいた額が支給されていたのですが、学院側は2013年7月に財務状況が厳しいことを理由に規定の削除と一時金の減額を教職員の組合に提案し、その後組合の合意を得ないまま就業規則から規定を削除したとのことです。なお、2014年夏の一時金は、規定より0.4ヶ月分低い2.5ヶ月分にとどまっているとのことです。

会社が、給与等の労働条件を一方的に変更することは原則として認められていません。特に給与については、労働者の生活を支える労働契約の中でも最も重要な要素といえますので、既に労働契約等で決まっている給与を減額することは、重要な労働条件の不利益変更になります。

労働条件の不利益変更は以下の3つの限定した場合しか認められていません。

1.労働協約を締結した場合
会社と、その会社にたる労働組合との間で労働協約を締結することによって、労働条件を不利益に変更することができます。

2.就業規則を変更した場合
原則として、就業規則を変更することで労働条件を不利益に変更することはできませんが、例外として、変更することに合理性があり、それが従業員全員に周知されていれば不利益変更をすることが可能です。
就業規則の不利益変更がどのような場合に「合理性」があるかについては、「労働者の受ける不利益性」と「使用者側の変更の必要性」とを総合的に考慮し判断されます。

3.労働者から個別同意を取る場合
一人一人の労働者の労働条件は、それぞれが会社に入社した際に、会社との間で結ぶ労働契約によって決まります。そのため個々の労働者との合意により、個別に労働条件を不利益に変更することは可能です。ただし、就業規則に定められている労働条件よりも低い条件で合意をすることはできません。

以上の場合以外は、会社が労働条件を変更することは認められていません。

今回の青山学院の件では、減額されたのは「毎月一定に支払われる給与」ではなく「一時金」です。また、学院側は減額理由を「財務状況が非常に厳しい。取り崩し可能な資金にも余裕がない」とした上で、少子化や学校間の競争激化を理由に挙げ、「手当の固定化は時代にそぐわない」などと主張しています。
学校側の主張は、一時金を減額する「合理的な理由」になるのでしょうか。
不利益変更が認められる上記3つの場合に当てはまるのでしょうか。

今回の提訴について、学院は「コメントを差し控える」としているとのことです。

皆さんの職場で、一方的に給与を減額されたことはないですか?
いつの間にか、決められていた休日が減っていたことはないですか?
「労働条件の不利益変更」かもしれません。

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