みなし労働と残業代 〜シリーズ 改めて「残業代請求」4〜

「うちは『みなし労働』だから残業代は発生しないんだよね〜。」という声をよく耳にします。さて、この「みなし労働」とはどういう「労働」なのでしょうか。

「みなし労働時間制」とは、労働基準法において、その日の実際の労働時間にかかわらず、その日はあらかじめ定めておいた時間労働したものとみなす制度です。
労基法において定められたみなし労働時間制には、次の3種類があります。

1.事業場外労働のみなし労働時間制
2.専門業務型裁量労働制
3.企画業務型裁量労働制

厚労省が発表した平成25年就労条件総合調査の結果によりますと、みなし労働時間制を採用している企業割合は10.8%となっていて、これを種類別にみますと、
1.事業場外労働のみなし労働時間制 9.2%
2.専門業務型裁量労働制  2.2%
3.企画業務型裁量労働制  0.8%

となっています。
今回は、みなし労働時間制の中でも採用割合が最も多い「事業場外労働のみなし労働時間制」について記載していきます。

「事業場外労働のみなし時間制」とは、取材記者、外回り営業社員などの常態的な事業場外労働や、出張などの臨時的な事業場外労働に労働者が従事する場合、使用者の具体的な指揮命令が及ばず、労働時間の把握(算定)が困難となることが多いため、使用者のその労働時間に係る算定義務を免除し、その事業場外労働については「特定の時間」を労働したとみなすことのできる制度です

労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合に、労働時間を算定しがたいときは、所定労働時間(所定時間を超えて労働することが必要である場合は、その業務の遂行に通常必要とされる時間)労働したものとみなします。
労働時間の一部について事業場内で労働した場合には、その時間については別途把握しなければならず、「みなす」ことはできません。

ただ、事業場外での業務に従事する人全てが「事業場外労働のみなし労働制」が適用できるということではありません。
例えば、次のように事業場外で業務に従事する場合であっても、使用者の指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はできません

① 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
② 無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働する場合
③ 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合

現在「みなし労働時間制だから、残業代は発生しない。」と思われている方、ご自身の働き方を再度ご確認ください。
もし使用者の指揮監督が及んでいたら、それは「みなし労働時間制」ではないかもしれません。

勘違いしやすい「残業代発生の有無」について、「改めて『残業代請求』」としてシリーズでお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
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