退職時のトラブル!?

「退職願」と「退職届」の違いをご存知でしょうか。

私自身、法律関係の勉強をするまで、この2つの違いを知りませんでした。「退職の意を伝える書面で、ただ呼び方が違うだけ」という認識でいたのですが、実はこの2つには大きな違いがあります

今回は、この「退職願」「退職届」について、ご紹介していきます。

まず「退職願」ですが、これは合意により労働契約を解約してもらうための申し出です。いわゆる「申込」であり、相手側(会社)が承諾してはじめて退職となるため、出した時点では退職とはなりません。また、相手側が承諾するまでは、自由に撤回ができます

次に「退職届」ですが、これは「退職しますよ」という決定事項の通達です。そのため、「退職願」と違って、特別な事情がない限り撤回することはできません

一般的に用いられるのは「退職願」だと思います。「退職します」という一方的な「退職届」より、「退職したいので、よろしくお願いします」という「退職願」の方が、相手に対して柔らかいため使いやすいのではないかと思います。ただ、退職の意志を上司に伝え、会社からも認められた後に出すという場合には、「退職届」でも特に問題はないかと思われます。
法律上は、退職の意思表示を書面で出すことまでは定められていないため口頭でも良いですが、後々のトラブルを避けるためにも書面にして残しておくことが慣習になっています。

それでは、会社が「退職願」に対して承諾の意思表示をしない場合は、どうすれば良いでしょうか

こちらについて、雇用の期間に定めがない場合(主に正社員)は民法627条で次のように定めています。(雇用の期間に定めがある場合(有期契約社員等)は、また違ってきます。)

民法627条〕
1.当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合について、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する
2.期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない
3.六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。

第1項は給与が日給制、日給月給制、時給制の場合に当てはまるとされているので、ほとんどの方は退職の申し出をしてから2週間が経過すれば退職することが可能です。
なお、第2項は給与が完全月給制の場合、第3項は給与が年俸制の場合に当てはまるとされています。日給月給制も第2項に当てはまるのではないかという議論もありますが、そちらの議論や第2項の解釈については後日機会があれば改めてご紹介する予定です。
(給与の詳しい形態につきましては、当ブログ「給与体系のあれやこれや」をご覧ください。)

このように、会社が「退職願」に対して承諾の意思表示をしない場合にも退職することは可能です。
ただ、「退職の意志はしっかり会社に伝えた」と証拠を残すためにも、上記の「法に定められた期日」を守った上で、改めて「退職届」を内容証明で送るということをお勧めします。
もし、退職したのに会社から「源泉徴収票」や「離職届」をもらえない場合には、基本的には税務署やハローワークで発行を依頼することができます。その場合、先に記した内容証明は、退職を証明する良い証拠になると思います。

退職をめぐるトラブルは実はとても多いです。退職時のトラブル、不当解雇等でお困りの場合は、専門家に相談することをお勧めします。

当事務所には、残業代請求や未払い賃金その他の会社とのトラブルについて、精通している弁護士がおります。
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