えっ?もらえる年金額って、こんなに少なくなるんですか?〜 シリーズ 社保と残業と私 1 〜

先日、厚生労働省が公表した公的年金の長期的な財政の8つのケースの見通しによりますと、ほぼゼロ成長が続き、女性や高齢者の就労が増えないケースでは、約30年後の平成55年度までに会社員世帯の年金水準は、政府が目標とする現役会社員の収入の50%を下回ることとなっていて、最も悲観的なシナリオでは、平成55年度には国民年金の積立金がなくなり、現役収入に対して39%程度にまで下がることになっています。

なぜ労働者が増えないと年金給付額が減るのでしょうか。
日本の公的年金は、現在「賦課方式」という制度をとっています。「賦課方式」とは、一定期間の年金給付に必要な費用を、その期間の現役被保険者等が納める保険料等で賄う方式で、「世代間扶養」とも言われています。つまり、現役世代がいま現在支払っている年金保険料が、いま現在の年金受給者の年金として支払われているということになります。そのため、労働人口が減ってしまうと支払われる保険料が少なくなりますので、必然的に受給できる年金の額も少なくなるということになります。

今回の厚生労働省の見通しによりますと、年金水準が現役会社員の収入の50%を確保するためには(現役会社員の収入の50%を確保することは、年金の給付及び費用負担の在り方を考える上での政府の目標となっています。)、労働人口として女性や高齢者が急増することが必要となっています。
今後は、女性や高齢者が働きやすい職場環境を構築していく必要があるのですが、同じく厚生労働省が先日公表した「平成25年度 都道府県労働局雇用均等室での法施行状況の公表  男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、パートタイム労働法に関する相談、紛争解決の援助、是正指導の状況を取りまとめ」によりますと、雇用機会均等室への労働者からの相談は昨年よりも増加し22,734件となり、内容別に見ると「婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱い」が前年と比較して14.8%増加した2,090件で、相談件数の増加数が最も多くなっています。この数字から、女性が働きにくい職場環境が増えてきていると推測することができます

女性が多く働ける社会でなければ、労働力人口は減り経済成長も難しいです。しかし、上記に示したように、現実には女性が働きにくいと感じる職場が増えてきています。この現状をどう打開していけば良いでしょうか。

今回から4回にわたり「社保と残業と私」というシリーズ社会保険や未払残業代、女性に対する不当な扱いなどの問題について記載をしていく予定です。

次回のテーマは社会保険の未加入」についてです。

このままの労働力人口ですと年金の受給額が減る可能性が高い、ということから今回のお話を始めましたが、厚生労働省の見通しの数字は「厚生年金保険」に加入していることを前提に算出されているものです。
皆様は、厚生年金保険に加入してますでしょうか。

当事務所では数多くの労働相談を受けていますが、特に残業代請求事件の場合、社会保険(厚生年金保険や健康保険)に加入をしていない依頼者の方が多く見受けられます。「会社の方針で社保には入っていない。」や「社保の件は会社から何も言われていない。」とのお話をお伺いしますが、その会社が法人の場合、社会保険に加入をすることは会社の義務になっています。

次回は、なぜ社保に加入した方が良いのか(なぜ社保に加入をしない会社があるのか)、会社が社保に加入していない場合どうすれば良いのか、について記載していきます。

当事務所には、残業代請求や未払い賃金その他の会社とのトラブルについて、精通している弁護士がおります。
是非、経験豊富な日比谷ステーション法律事務所へご相談ください。