「残業代ゼロ法案」を考える 5 〜 「反対派」の意見 〜

残業代ゼロ法案」(日本型新裁量労働制)について、政策の提案内容の詳細や背景についてご紹介してきましたが、今回はこの政策の導入を反対する意見を見ていきたいと思います。

今回の政策の提案内容を簡単に記載すると、次の2タイプの社員に対しては、労働時間ベースではなく成果ベースの労働管理を基本とする、つまり労働時間と報酬のリンクを外し残業代が出ないという新たな働き方を適応する、というものです。

A.労働時間上限要件型 − 労働時間に上限を設け、かつ労使で合意した社員
B.高収入・ハイパフォーマー − 年収1000万円以上の社員
(いずれも本人の合意が条件)

新聞やインターネット上の反対派の意見は、大きく次の2つに分けられるよう見受けられます。

1.成果主義がうまくいかない
 日本では1990年代に「成果主義」の導入が始まり、今は上場企業の8割以上が何らかの形で取り入れていると思われていますが、導入から20年以上の年月を経てここまで普及したにもかかわらず、評判は依然として芳しくないです。なぜならば、成果評価の納得性が低いからです。そもそも仕事の境界線が曖昧でチームワークを重視するといわれる日本の企業では、限りなく「個人の成果」としての切り分けが難しいです
「個人の成果」が分かりにくい中で、「成果ベース」で労働を管理していくというのはかなり難しくなるのではないかと思われます。また、何をもって成果とするのか、雇う側のさじ加減によって曖昧になる恐れがあるため、成果を求められた社員が残業代の出ない「自主的」な長時間労働を強いられる可能性があり、結果的に労働環境の悪化を招くことになりかねません。

2.「ブラック企業」が増える
 労働時間が規制緩和されることで、一番心配しなければならないと思われるのはブラック企業」によるこの政策の悪用です。
 現状ですら、「ブラック企業」はまともに残業代を支払っておらず、過酷な長時間労働で若者を酷使し、うつ病などを蔓延させています。このような政策をうてば、「安く」「長く」働かせようとする「ブラック企業」が増加することは容易に想像がつきます
ブラック企業」が増えると、若者が次々に健康を損ない経済発展ができません。また、税収が減り医療費が増え、挙句に消費まで減ってしまうこととなります

反対派の意見を見ていると、この政策を施行することで、かえって労働者の働くモチベーションを下げ、さらに経済の発展にも繋がらないので、このような政策は施行すべきではないという結論になりそうです。

次回は、この政策の導入に対する賛成派の意見を見ていきます。