「残業代ゼロ法案」を考える 1 〜 産業競争力会議の提案内容を読む 〜

平成26年4月22日(火)の朝日新聞の報道によると、安倍政権が「残業代ゼロ法案」とも呼ばれる政策を本格的に打ち出したとしています。
この報道を受け、世間では様々な意見が飛び交っています。

当ブログでは、この法案の内容や法案の目的、他の国の残業事情などをお伝えしながら、「残業代ゼロ法案」(正式名称:日本型新裁量労働制)について考えていきたいと思っています。
本日より7回にわたりシリーズでアップしていく予定ですので、是非ともお付き合いいただければ幸いです。

第1回目の今日は、今回安倍政権が打ち出した「残業代ゼロ法案」と呼ばれる政策の内容について詳しくみていきます。

この政策が打ち出されたのは、「産業競争力会議という会議です。平成25年1月23日に第1回目が開催されたこの会議は、日本経済再生本部の下に開かれる会議体で、日本の産業の競争力強化や国際展開に向けた成長戦略の具現化と推進について調査審議することを目的としています。議長は内閣総理大臣とされているので、今は安倍晋三氏が議長を務めています。

この件について平成26年4月22日の会議に提出された資料のタイトルは、「個人と企業の成長のための新たな働き方 〜多様で柔軟性ある労働時間制度・透明性ある雇用関係の実現に向けて〜」とされていて、構成は次の5つ項目に分かれています。

Ⅰ.「働き過ぎ」防止の総合対策
Ⅱ.個人の意欲と能力を最大限に活用するための新たな労働時間制度
Ⅲ.予見可能性の高い紛争解決システムの構築
Ⅳ.多様な正社員の普及・拡大
Ⅴ.「世界トップレベルの雇用環境」の実現に向けた実行体制づくり

話題となっている「残業代ゼロ」について記載されているのは、「Ⅱ.個人の意欲と能力を最大限に活用するための新たな労働時間制度」の部分です。
「新たな労働時間制度」は、「業務遂行・健康管理を自立的に行おうとする個人を対象に、法令に基づく一定の要件を前提に、労働時間ベースではなく、成果ベースの労働管理を基本(労働時間と報酬のリンクを外す)とする時間や場所が自由に選べる働き方」として、次の2タイプが対象となっています。
A.労働時間上限要件型 − 労働時間に上限を設け、かつ労使で合意した社員
B.高収入・ハイパフォーマー − 年収1000万円以上の社員
(いずれも本人の合意が条件)

「新たな労働時間制度」を創設し、成果ベースで、一律の労働時間管理に囚われない柔軟な働き方が定着することにより、高い専門性を有するハイパフォーマー人材のみならず、子育て・親介護世代(特に、その主な担い手となることに多い女性)や定年退職後の高齢者、若者等の活用も期待されるとされています。

この資料内で色々な提案がある中で、「新たな労働時間制度」が取りざたされ注目を浴びているのですが、実はこの議論はこの会議で初めて出たわけではなく、似たような議論が第1次安倍政権の時に「ホワイトカラーエグゼンプション」として検討されていました。

残業代ゼロ法案」の参考になったとされるホワイトカラーエグゼンプションとはそもそもどのような内容だったのでしょうか。

次回は、当時検討された「ホワイトカラーエグゼンプション」についてご紹介します。