残業単価はいくら? 〜 自分の「時給」を知る方法 〜

前回まで、3回にわたりシリーズで固定残業について詳しくお伝えしましたが、そもそも「残業単価」はどのように計算をすれば良いのでしょうか。

基本的に、残業単価、つまり割増賃金の基礎となるのは、所定労働時間の労働に対して支払われる「1時間当たりの賃金額」です。例えば月給制の場合、各種手当も含めた月給を1ヶ月の所定労働時間で割り、1時間あたりの賃金額を算出します。
このとき、次のA〜Gは、労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支給されていることなどにより、基礎となる賃金から除外することができます。

A. 家族手当
B. 通勤手当
C. 別居手当
D. 子女教育手当
E. 住宅手当
F. 臨時に支払われた賃金
G. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

上記A〜Gは例示ではなく、限定的に列挙されているものです。これらに該当しない賃金は全て割増賃金の基礎に参入しなければなりません。
ただし、A〜Eの手当については、このような名称の手当であれば全て除外できるというわけではありません。
除外できる手当は、あくまで「個人的事情」によって金額が変わるものであり(例えば、家族手当であれば、家族の人数によって支給するもの)、一律に支払われるもの(例えば、家族手当であれば、扶養家族の人数に関係なく支払われるもの)については、割増賃金の基礎となる賃金から除外できません。

なお、「1時間当たりの賃金額」は、基本的には、月給から上記手当を引いた金額を、「1ヶ月の(平均)所定労働時間数」(※)で割った金額となります。
(※)1ヶ月の(平均)所定労働時間数
(365日(366日)− 1年間の休日数) × 1日の所定労働時間数 ÷ 12ヶ月

例えば、次の事例の場合、計算方法は以下のようになります。

<事例>1ヶ月の所定労働時間が173時間、次の給与の場合、
基本給 : 200,000円
役職手当:  30,000円
家族手当:  15,000円
通勤手当:  8,000円
合計 253,000円

割増賃金の基礎となる賃金の合計は、
200,000円(基本給)+ 30,000円(役職手当) = 230,000円 
となり、1時間当たりの賃金額は、
230,000円 ÷ 173時間 ≒ 1,330円 です。
割増賃金には1時間当たりの賃金に割増賃金率(☆)をかける必要がありますので、
1,330円 × 1.25 ≒ 1,663円 となります。

☆割増賃金率は次のとおりです。
・時間外労働 − 2割5分以上(※)
休日労働  − 3割5分以上
・深夜労働  − 2割5分以上
(※)1ヶ月60時間を超える時間外労働については5割以上 (中小企業については、当分の間、適用が猶予されます。)

残業代は、上記の計算方法で算出した割増賃金に、実際に行った残業時間数をかけて出た金額になります。
きちんと残業代が支払われているか、一度ご確認してみてはいかがでしょうか。

当事務所には、残業代請求や未払い賃金等の会社とのトラブルについて、精通している弁護士がおります。
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