「無理強いは罪です。」 〜 シリーズ 今日も労基法4 〜

海上自衛隊横須賀地方総幹部は9月1日、海上自衛隊護衛艦で今年初めに乗組員の30歳代の男性隊員が上司のいじめを苦にして自殺したと発表しました。
発表によると、隊員は上司に私物の携帯電話を隠されたり、殴るなどの暴行を受けたりする日常的ないじめを受けていたとのことです。
パワハラのニュースが後を絶ちません。
6月16日の「個別労働紛争の相談内容は、『いじめ・嫌がらせ』が2年連続トップ!」のブログにも記載しましたが、厚労省の発表によると、2013年度の個別労働紛争の相談状況において、パワハラを示す「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は前年比14.6%増の5万9,197件に上り、10年前の約5倍に急増していることがわかりました。

パワハラ」と聞くと、労働基準法第5条「強制労働の禁止」が思い出されます。

労働基準法第5条〕
「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。」

憲法第18条は「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役を服させられない。」と規定していますが、その意味は、国又は地方公共団体による意に反する苦役を課せられないことの保障のみでなく、国民相互間についても同様の保障をしているものであり、本条の規定も、まさにこの憲法の趣旨に則って、これを労働関係について規定したものといえます。

全てのパワハラ労基法第5条違反であるとは言えませんが、中には違反しているものもあるのではないかと感じています。
例えば判例では、「暴行は加えないが、反抗すればいかなる制裁を加えるかもしれないような気勢を示して労働を行わせたもの」(「北海道鉱山強制労働違反事件」S28.3.2 旭川地裁)や、「頭痛のために就寝中の労働者の布団を剥ぎ取って離床させ、大声で怒鳴りつけ、あるいはまた腕をまくって今にも殴りかかるような態度を示して労働を強制したもの」(「丸木製糸強制労働違反事件」S29.9.30 水戸地裁)は「強制労働」と認められた事例となっています。
似たようなことが、職場で起きていませんでしょうか。
本条の罰則は、労基法第117条(罰則)で定められていますが、労基法違反の中で最も重い懲役となっています。また同時に刑法の暴行罪、脅迫罪、監禁罪の構成要件にも該当する可能性があります。
パワハラは、あってはならない行為です。
ご自身やご自身の周りでこのような状況が見られましたら、一度専門家に相談することをお勧めします。

今回の労基法第5条の説明の際に、憲法第18条も併せてご紹介しましたが、労基法日本国憲法はとても密接な仲にあります
その関係を最も色濃く表しているのが、労働基準法第1条「労働条件の原則」になります。
次回はこの労基法第1条のご紹介をさせていただきます。

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