「素直な気持ちで信じていたのに・・・!」〜 シリーズ 今日も労基法 2 〜

先週末の「残業代」関係のトピックは「たかの友梨ビューティークリニック」ほぼ一色でしたね。
こちらの内容ですが、同社の仙台店が仙台労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが8月22日に判明したというものであり、その理由は大きく2つあります。
1つ目は、従業員が有給休暇を取得すると、固定残業代から有給分を無断で差し引いていたことで、2つ目は、本来なら労使協定締結の際には従業員が選んだ代表者と締結する必要があるところ、本人の承諾を得ずに店側が選んだ従業員と協定を結んでいたことです。
今回の件と、当ブログで投稿した「労働者代表の方!労使協定は内容の確認を!」(2014年8月12日) 「有給休暇を取得したのに、『欠勤控除』になっています。」 (2014年8月15日)の記載内容とが似ていたため、今回の記事を読み驚きました。「たかの友梨」がしていたことは、事業主のやりがちなことなのかもしれませんね。有給休暇を取得した際の給与明細や、「何」に対して労使協定が必要で締結しているのかを、皆さんいま一度ご確認ください。

さて今回は、前回予告した「休日の数え方」について記載していきます。
休日について、労基法では以下のように定めています。

労働基準法第35条〕
「1.使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければいけない。
 2.前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。」

この条文は、性格がいやらしいなぁと思います。
この条文のとおりでいくと、休日は週に1日だけでも問題がないように思えます。1年は52週あるので、年間で52日の休日で問題がない、と理解できます。
ところが、労基法は第32条で法定労働時間を「1日8時間、1週間40時間(事業によっては44時間)」と決めています。色々な変形労働時間制はありますが、労働時間を平均するなどしてあくまで「1日8時間、1週間40時間」に収まるようにはしています。つまり、 1ヶ月や1年間でみたときに、労働時間数がちゃんと法定時間に収まっているかということが問題となります。休日の数も、法定労働時間を守ることを前提として決めていく必要があります。
では、実際のところ、年間休日は最低何日くらいあれば良いのでしょうか
労働時間は「1週間に40時間(事業によっては44時間)」と定められているので、1年間の労働時間は、次のとおりとなります。(「1週間に40時間」で計算します。)
1.まず、1年間に何週あるかを求めます。(閏年だと数字が違ってきます。)
  365日 ÷ 7日 ≒ 52.14週
2.次に、年間の労働時間数を求めます。
  52.14週 × 40時間 ≒ 2085.71時間

この計算で算出された、2085.71時間が、年間の法定労働時間数となり、この時間を超えて労働させてはいけないことになります。
具体的にみていきますと、1日の所定労働時間が8時間の場合は、
1.年間の労働時間数を所定労働時間で割り、1年間の出勤日数を算出します。
  2085.71時間 ÷ 8時間 ≒ 260.71日
2.年間の出勤日数が出たので、その数を基に休日数を算出します。
  365日 − 260日 = 105日
つまり、 所定労働時間が8時間の場合は、1年間で最低105日の休日が必要、ということになります。

1日の所定労働時間が7時間の事業所の場合を同様の方法で計算すると、年間休日が68日となるのですが、労基法32条の4の「1年変形労働時間制」の場合は、法律で休日は最低85日を確保するように決められているので、休日は85日までしか設定はできません。「平均」して「1日8時間、1週間40時間」の労働時間を守ろうとすると、「変形労働時間制」という制度をとる必要があります。)

上記に説明した労基法第35条の「休日」の条文だけを読むと、「1日の所定労働時間が8時間でも、週に1回の休日で大丈夫」と思ってしまってもおかしくありません。実際に、そう思って休日数を設定している会社もあるかもしれません。
「職場の休日数がやたら少ないなぁ。」と思っている方は、いま一度就業規則などを確認してみてください。

今回は、油断したら騙されてしまうかもしれないちょっといやらしい第35条(・・・ごめんなさい。)をご紹介しましたが、次回はあまり知られていない第6条「中間搾取の禁止」をご紹介する予定です。

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